川上恵(沙羅けい)の芸術村
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                            シーサイドと百合



     
     「シーサイドに、200万輪のゆりが咲き乱れる」
     「海とゆりの競演」
     なるキャッチフレーズにひかれて、
     梅雨の合間、大阪湾に浮かぶ人工島、舞州に百合を見にいってきた。

     何にもないだだっ広いスペースに、1700台が入れる駐車場。
     その駐車場から、歩かされること、歩かされること。
     途中から百合の香りが漂ってくるものの、ゆり園に至るまでのアプローチ、仕掛けも趣も
     何もない。

     入口近くで、「ああ、そういうこと」と気づく。観光バスの駐車場が傍にあった。
     
     園内に入ると、大阪湾を背景に百合園が広がり、
     オレンジ・イエロー・ピンク・ミックスと、色ごとのゾーンが楽しめるようになっている。
     開放感、明るさ、色とりどりの百合。ねらい目はそういうところだろうか。

     だが、人間というのは欲張りなものだ。
     いくら百合が綺麗でも、芳香を放っても、そればかりでは飽きてくる。
     緑の木蔭が恋しくなる。所々に屋根つきの休憩所がほしくなる。
     百合の季節は、6月7月である。

     とはいえ、百合の花弁の向うに大阪湾を航行する船が見え隠れする様は、面白い。
     今年は、初年度。2回、3回と回を重ねるごとに充実していってほしい。
     夏空の下、健気に咲いている百合のために。