川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
ホーム  エッセー  旅  たわごと    雑感 出版紹介 
                


                 感動が薄くなって、哀しいな



   飛行機に乗れない私にとって、東北への旅は大変だ。
   だから列車とバスでのツアーを見つけたときは、迷わず申し込んだ。
   コースに岩手山と雫石が入っていたからだ。
   それに震災後の東北は初めてだ。

   今回の旅では東北の10景を訪ねるという。
   大阪からサンダーバードで金沢へ。そして北陸新幹線で上越妙高まで。それからは
   バスでの移動である。以前に訪ねたところもあるが、文句は言えない。
   飛行機に乗れないのだから。

   蔵王温泉 → 銀山温泉 → 角館 → 田沢湖・たつこ像 → 雫石高倉温泉 → 岩手山 
   → 平泉・中尊寺 → 松島 → 裏磐梯・五色温泉 → 五色沼 → 大内宿 → 鶴ヶ城
   → 上越妙高  と強行軍である。
  
   角館は紅葉の真っ只中だった。
   が、雰囲気は城下町の萩や龍野、津和野とそう変わらない。
   日本のあちこちにある小京都の1つだなと、冷めた目の自分が嫌だ。
   それもそのはず、「みちのくの小京都」と呼ばれているそうだ。
   小京都はあっても、小奈良はないんだなあ……。なぜだろう。

   大内宿は時代劇のセットの様だった。
   大内宿は、会津城下と下野の国(日光今市)を結ぶ32里の内、会津から2番目の宿駅として
   1640年ごろに整備された宿場町だ。
   だが当時をしのぶには整備されすぎていた。美しすぎる。
   茅葺屋根の家が続いているが、どの茅葺の家も土産物を商っており、私をがっかりさせた。
   

   私は胸がチクりとした。
   「感動が薄くなってるなあ。昔なら何を見ても、わあ、わあと歓声をあげていたのに。
   なんでも珍しがっていたのに。感性が鈍ったのかな。下手な歳のとり方をしているなあ……」
   軽い自己嫌悪に陥っていると、
   でも雫石では壬生義士伝の世界に浸りこめたやないの、岩手山をずっと眺めてたいと思った
   やないの、雫石の雲海と朝陽は一生忘れへんと思うよ。


 


                          2018.11.21