川上恵(沙羅けい)の芸術村
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                         小さい秋みつけた



     中国で広大な景色を見たせいか、日本の箱庭のような小さな秋が見たくなった。
     紅葉が美しくって、人気がなくて、と我儘をみたしてくれる場所……。
     そう言えば長い間、植物園なる場所とはご無沙汰だ。。
     「そうだ、大阪市立大学理学部付属植物園」
     名前はいかめしいが、広々としていて植物の数も多く、花の情報などにも親切である。

     植物園からは交野の里山の風景が美しい。
     4つの尾根と3つの谷を有する地形に、6700種、34000本の植物が植わっている。
     外国に紛れ込んだかと錯覚するメタセコイヤの林、
     赤く染まったかえでや桜。
     空いちめんを黄色で覆っているユリノキ。
     
     かと思えば、
     芙蓉が可憐に咲き、こぶく桜がちらちらと小さな薄ピンクの花を咲かせている。
     水辺には黄色や紫の熱帯スイレン。
     紅葉といっしょに花も楽しめる。

     ひときわ私の興味をひいたのは、沼スギである。
     湿地帯に生育する沼スギは、酸素を取り込みやすいように呼吸根を地上に噴出させている。
     その呼吸根たる姿は、朽ち果てた石仏であったり、小動物のようであったり、宇宙人のようで
     あったりと、見ていて飽きることがない。  
     生きるための知恵に感心しきりだ。
     あたりに人影はなく、この珍しい光景を独り占めできる贅沢。

     鳥のさえずり、黄金色の銀杏のじゅうたん、不思議に雲ひとつない真青な空。
     そして、カサコソと乾いた落葉の音。
     

       
  
  こぶく桜   芙蓉   ヌマスギ  ユリノキ   
     

                                                          22・11・18