川上恵(沙羅けい)の芸術村
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                        竹島


     竹島に行ってきた。
     言うまでもないが、領土問題でもめている、あの竹島ではない。
     三河湾に浮かぶ神々の島である。
     対岸からこんもりとした島を眺めたとき、私は神々から呼ばれているような、
     不思議な懐かしさを感じ、387Mの長い橋を渡った。

     周囲680M、高さ22Mの島は、天然記念物である。
     藤原俊成が琵琶湖の竹生島から弁財天を勧請し、「生」を取り、竹島となったとか。
     そんな小さな島に、弁天様をはじめ、大黒さんや龍神など、5つの神社が祀られている。

     私は急な階段を、休み休みしながらゆっくり登る。
     暖地性の植物が繁り、陽の光を遮っている。
     弁天様や龍神がおわすに相応しい雰囲気だ。
     島の頂上には年月を感じさせる「八百富神社」が鎮座していた。
     少し歩くと視界が一変した。明るく穏やかな三河湾が広がっている。
     島の最南端の竜神岬から、沖に浮かぶ三河大島や渥美半島が望めた。

     冬の太陽が優しく海面を照らし、ユリカモメが波間に羽根を休めている。
     
     ふと私はもう1つの竹島を思った。
     日本海に浮かぶ断崖絶壁のあの島にも、神はいるのだろうかと。
     いてほしい……と思った。