川上恵(沙羅けい)の芸術村
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                        嵐の誕生日




     誕生日に何が欲しいかと息子に聞かれ、欲しい物は何もないと答えた。
     「せいないなあ。それなら何がしたい?」
     「京都の植物園かな、それと美味しいもの」
     ということで、京都行きとなった。

     当日大阪は快晴だった。天気予報も近畿地方は晴れマークだった。
     「俺、バリバリの晴れ男やねん。今日は安心してや」
     「うん、晴れ男に期待してる」
     万に1つも雨の降る心配のない青空だ。

     ゆっくり食事を済ませ、北山の植物園へ向かう頃になると、空の色が怪しくなってきた。
     「おかしいな、俺、晴れ男やのに……。けど、車に傘つんでるから」
     悪いね、私、筋金入りの雨女やねん。
     フロントガラスに雨粒が1粒、ポツリと乗っかった。

     車が植物園に着くと、突然、嵐のような大雨になった。
     こうなれば笑うしかない。
     それでも広い園内で、椿や早咲きの桜を楽しんだ。
     温室ではアリゾナの景色を楽しんだ。名前の知らない植物のなんと多いこと。
     60歳以上は入場料無料というのは、嬉しいような寂しいような……。

     「やっぱり降ったね」
     「母のパワーに負けました。けどその雨女なんとかせんと、そのうち友達なくすで」
     「水禽窟の音、綺麗やったねえ」
     私は話をそらす。

     こうして私の○○歳は、嵐から始まった。