川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
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                       恐る恐る西安へ 

 

     人生一寸先は、何が起こるか分りません。
     絶対にありえないことが起こりました。
     乗ったんです。乗りました。とうとう乗りました飛行機に。それも海外、中国へ。

     すたるほどの女を持ち合わせているわけではないけれど、それでも、ここで乗らなきゃ
     女がすたる、
     ということがありまして……。
     東京タワーから飛び降りるつもりで乗りました。

     そこまで私を突き動かしたもの、それは恩義。
     
     関空から北京までの飛行機は少し揺れました。
     たえまなく続く小さな振動。飛行機に対して無智な私は、
     「機体のどこかのビスかネジが、外れるんではないだろうか」
     と心底心配しました。
     翼がはずれ、バランスを崩しながら、片翼でヨロヨロ飛行する光景が浮かびます。
     機内食の味も何も分ったものではありません。

     西安への乗り継ぎの北京空港で、真っ先にビールを飲みました。
     初めて人心地がつきました。

     私の不思議なところは、飛行機は怖いのに、眼下の景色は見たいのです。
     自分の居場所の確認をしたいのです。

     北京から西安までの光景は、茶色一色で異様でした。生物の気配が
     全くないのです。     
     尖った岩山の連峰が、どこまでも続きます。
     私は初めて大陸なるものを見たと思いました。
     茶色の無機質な山々は、死後の世界を見るようでした。

     兵馬俑は流石に素晴らしいものでした。
     中国の底力、爆発する生命力を、まのあたりにつきつけられた気がしました。
     中華思想もさもありなん、と妙に納得したのでした。

     

      兵馬俑碑林
大雁塔の仏達 


                                                       22、11、20