川上恵(沙羅けい)の芸術村
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                ササユリを見に



    飛鳥里山クラブが主催する「ササユリの香る丘見学ツアー」に参加した。
    甘樫丘の一角に、人知れず咲くと言う。
    
    新緑の匂いに包まれて小高い丘を登ってゆく。
    葉擦れの音、澄んだ小鳥の声。日頃の疲れが消えてゆくようだ。

    黄菖蒲が咲く池には、絶滅危惧種の黒メダカが泳ぐという。
    我が家の甕にもメダカが泳いでいるが、あれは確か1匹100円もしなかったなあ。

    丘の頂上近くに、オカトラノオが数本、蕾をつけている。
    
    標高148Mの頂上からは藤原旧跡や大和三山が一望できる。
    飛鳥寺の屋根が、往時を偲ばせる。里から吹き上げてくる微風が心地いい。
    
    頂上から少し下った奥に、ササユリの群生地はあった。
    ポツリポツリと清楚な美女のように、うつむき加減に咲いている。
    その儚さげな白い姿は、思わず手を添えてやりたくなるほどだ。
    奈良には白色が多く、ピンクは和歌山に多いという。

    今年は開花が遅く、例年の2割ほどだと説明を受け、
    ササユリに未練を残しつつ甘樫丘を下る。

    「わあ、綺麗!」
    モンシロチョウが乱舞しているような、ヤマボウシの木。
    花に見える4枚の白い葉。ヤマボウシは清らかな山の法師である。
    
    1時間ばかりのツアーだったが、心地いいひと時だった。
    帰りには歴史好きの友人と大和高田に寄り道し、長谷本寺とからくり時計を楽しんだ。

    

                                      2019.6.1