川上恵(沙羅けい)の芸術村
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                ラストサムライの舞台


     関西での貴女のお奨めは? 
     と遠来の友人に聞かれた場合、私は必ず書写山・圓教寺を紹介する。
     畿外からの人は、大抵その名前をしらない。
     いや、関西の人にも、あまり知られていないかも知れない。
     「西の比叡山って言われているの。きっと感動すると思うわ」
     
     370メートルの清浄な山上に、突如出現する壮大な伽藍……。
     京都の清水寺や、長谷寺の舞台づくりを彷彿させる、磨尼殿。
     黒光りした堂内の床や廊下に、思わず身を正す、大講堂や食堂(じきどう)。
     荘厳にして静謐。
     自然と一体化した建築物に、私は深い精神性を感じる。
     鳥のさえずりがこれほど心に沁みる寺院を、他にしらない。
     
     「ラストサムライ」や大河ドラマ「武蔵」に出てきた寺、と言えば、お分かりの方も多いだろう。
     また、官能的歌人・和泉式部ゆかりの地でもある。

        暗きより暗き道にぞ入りぬべき はるかに照らせ山の端の月     和泉式部

     
     圓教寺を訪ねた友人達からは、必ずお礼とお褒めの言葉を頂く。
     「さすが、旅のペンクラブの会員だねえ」と。