川上恵(沙羅けい)の芸術村
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                           日本列島縦断の旅



     電車大好き人間である。
     もどきとはいえ乗り鉄人間としては、日本最北端と最南端の鉄道駅だけは見ておきたいと、
     日本列島縦断5日間の旅に出た。相棒は夫だ。

     息子に話すと、「狭い空間で、ずっと一緒は退屈するで」と、呆れ顔である。
     確かに心配ではある。だが飽きたら飽きたときのこと、なるようになるだろう。
     ただ5日間だけは喧嘩をしないでおこうと、取り決めた。
     
     1日目 
     大阪から東海道新幹線で東京へ。東京から東北新幹線で新青森駅。
     新青森駅から津軽海峡線で函館駅。
     2日目
     函館駅から函館・室蘭本線で札幌へ。札幌から特急サロベツで稚内駅。
     稚内駅は日本最北端の駅である。
     「野生動物が出てきて、急停車する場合があります」の車内アナウンスに、窓に顔をくっつける。
     3日目
     稚内から宗谷本線で札幌駅。札幌駅から函館本線スーパー北斗で函館駅へ。
     函館駅から津軽海峡線で青森駅。

     私は雨女である。
     今回の旅の一番の楽しみは青森から「寝台特急あけぼの」に乗車することだった。
     寝台車は一度中国で乗ったことがある。
     だが日本ではまだ乗ったことがない。
     なのに、なんでこうなるの?
     東北地方は悪天候で寝台車は運休となり、急遽、東北新幹線で東京に向かう事になった。

     4日目
     東京から新幹線で新大阪駅。いっしゅんここでリタイアも考えるが、馴染みの新大阪駅を
     素通りする。妙な感じだ。
     新大阪駅から山陽・九州新幹線で一気に、鹿児島中央駅まで。
     鹿児島中央駅から在来線・指宿枕崎線で指宿駅。
     5日目
     指宿温泉からバスで西大山駅。この駅が日本最南端の駅である。
     開聞岳が裾野を海に落としている。この山を眺めながら特攻隊が飛び立ったのかと、胸が痛む。
     西大山駅から鹿児島中央駅へ。久留米駅から「ゆふ3号」に乗り、大分駅へ。
     由布院を通る「ゆふ号」は、赤い車体が可愛らしい。
     大分から小倉に出て、新幹線で新大阪駅。  ああ、疲れた……。

     走行距離は6,200〜6300km。約、地球の半径分(6,378km)の距離である。
     北緯45度25、03分の稚内駅から、31度11分の西大山駅まで、乗りに乗ったものである。
     ちなみに私の住む藤井寺市は34度34分だ。     

     鉄道オタクとしては、一仕事をやり終えた軽い達成感がある。
     だが待てよ、今回の旅の殆どは新幹線だ。それもグリーンが多かった。夜はホテルか旅館だ。
     真のオタクは新幹線など使わずローカル線で、駅駅の趣を楽しむのではあるまいか。
     馴染みのない東北新幹線では、車窓の景色があまりにも早く流れすぎ、
     駅名すら読み取れなかった。動体視力の低下だろうか……。
     
     
     心配した喧嘩もなく、夫はよく食べよく飲み、よく眠りと、それなりに旅を楽しんだようである。