川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
ホーム  エッセー  旅  たわごと    雑感 出版紹介 
                 



                    太地町・くじら博物館



   動物やイルカのショーは好きではない。
   と、いいつつクジラのショーをみた。矛盾することこのうえない。

   自然の入り江を仕切ってつくられた天然のプールは、広々としていて海の匂いがする。
   波が穏やかだ。入り江の一方は低い山だ。
   飼育員のお兄さんとお姉さんは、海の上に浮かべた台に乗って、合図をした。
   どこにいたのか、数頭のゴンドウクジラが集まってくる。
   
   重い体を持ち上げてのジャンプ、イルカのように高くはなく、ヨッコラショという感じ。
   スマートさには欠けるが、それが愛嬌。
   水面から尾びれだけを出して泳いだり、お姉さんを背中に乗せて泳いだり、長い棒の先につけた
   ボールめがけて飛んだりと、熱演だ。
   最後には私たちの傍にまで来て、挨拶をしてくれるサービスぶり。

   私は拍手をしてクジラの演技に見入った。

   「あれっ?」
   見ていて、イルカのような辛さや哀しさはない。どうしてだろう?
   理由はすぐに分かった。
   海続きの入り江で悠々と泳いでいること。
   イルカのような洗練された演技ではなく、「ヨッコラショ、この体重いわあ」と言っていそうで
   悲壮感が感じられないこと。
   海風もここちいい。

   ふと、反捕鯨団体シーシェパードが頭をよぎった。

   自然保護は大事である。動物愛護も大事である。地球温暖化問題も大事である。
   他にも大事なことはまだまだある。
   だが、行き過ぎた考えや行動は好きになれない。極端は嫌いだ。
   生きていて楽しくないもの。
   沢山の善と少しの悪で、ちょうどいいのではないかな。