川上恵(沙羅けい)の芸術村
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               霧島神宮



     
     友人と二人、九州を楽しんできた。3泊4日である。
     新幹線で福岡に到着し、熊本・阿蘇山から、いっきょ宮崎へ。そして鹿児島・長崎と
     忙しくもほぼ九州一周の旅である。   
     二人旅とはいえ、バスの中こそ一緒だが、わりあい自由に動き回った。
     例えばこんな風。
     
     友人が鹿児島市内観光をしている間、私は霧島神社へという具合に。
     私は以前にも車で九州一周をしたのだが、そのとき霧島神宮を見落してしまったのだ。
     西の日光と呼ばれる社殿は、ぜひとも見ておきたかった。

     霧島神宮は私の期待を裏切らなかった。
     太陽の差し込まない長い参道。樹齢700年の老杉が生い茂る境内、
     何千年もの昔に戻ったような神秘な空間、朱塗りの鮮やかな社殿、社殿や拝殿を飾る
     極彩色の彫刻……。

     このまま私はここで消えて、自然と同化してしまうのではないかという、かすかな怯え。
     なのに、ここから動きたくないという相反した心と体。
     あたりを見回しても誰もいない。真昼間なのに私ひとり。
     
     感じるのは厳かな霊気だけ……。