川上恵(沙羅けい)の芸術村
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               お気に入りの美術館


    お気に入りの美術館がある。
    京都市左京区岡崎にある「細見美術館」だ。
    こじんまりとした品の良い空間は、見る者を疲れさせない。
    
    女の子供のいない我が家の3月は、華やぐこともなく淡々と過ぎてゆく。
    今年は忙しさにまぎれ、お雛様の色紙も飾りそびれてしまった。
    節句の行事も季節感も失いつつある私……。寂しいなあ。
   
    丁度、細見美術館では「かぐやの婚礼調度と雛道具」展が開催されている。
    3月もあと2日で終わろうかという日、私はい急いで京都へ向かった。
    折りしも桜がチラホラと、春を彩り始めていた。

    ほどよい照明の下、
    蒔絵が施された貝桶・立ち雛の掛け軸・姫箪笥のたぐい・金箔が美しい花車の屏風 
    などなど、ため息混じりにゆっくりと、雛祭りの雰囲気を楽しむ。
    そんな豊かな時間と空間を持つうち、じょじょに本来の自分を取り戻す。

    そしてもう一つ、この美術館がお気に入りの理由は、
    お洒落な「カフェ・キューブ」の存在である。
    ワインも揃っていて、美味しいイタリアンがいただける。
    目にも口にも美味しい美術館というのは、そうそうない筈。

    滑り込みセーフの、今年の私の雛祭り、
    「晴れの日」の過ごし方を大事にしたいと、最近つくづくそう思う。
    
    

       

                                       22・3・30