川上恵(沙羅けい)の芸術村
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              晴れの寺



    雨乞いの寺は多いが、晴れ乞いの寺は珍しい。

    奈良県五條市にある寄足山・生蓮寺は、晴れ乞いの寺である。
    空海が高野山に行く道すがらに立ち寄り、晴れ祈願をされたことから「寄足山・よらせざん」
    と呼ばれ、山号となっている。
 
    本堂に安置された地蔵菩薩の見事さに圧倒される。なにより優しいのだ。
    まさに人々を救う仏様だと、その慈悲に満ちたお顔から目が離せない。
    平安時代初期、嵯峨天皇が皇后の安産祈願のために地蔵尊を安置したのが創りだとか。
    後に、空海が高野山開創の時、生蓮寺に立ち寄り、45pほどの小さな地蔵を刻み、
    本尊の体内に安置したそうだ。
    地蔵が2体、有難さも2倍である。
    ご本尊の大きさは3、27mもあり、慈愛のオーラが降ってくるようだ。

    晴れ祈願の寺らしく、本堂には数えきれないほどのテルテル坊主が吊り下げられている。
    すべて奉納されたものだ。
    ところが今年はこのコロナ禍である。
    毎年奉納される団体が、テルテル坊主を作れなくなったとかで、
    ご住職はテルテル坊主の奉納をネットで呼びかけられた。

    なんと全国から続々とテルテル坊主が奉納され、すでに本堂前に吊るされている。
    コロナ退散の願いをこめて。
    もちろん私も奉納した。
 
    また生蓮寺は蓮の寺としても有名だ。
    生命科学博士でもある住職は蓮和尚とも呼ばれ、境内には120品種の蓮が咲き、日本では
    この寺にしかない生蓮寺白彼岸蓮も咲かせておられる。
    ちょうど今頃は境内は浄土と化していることだろう。
    
    蓮好きな雨女としては、気になるお寺である。



            2020.6.23