川上恵(沙羅けい)の芸術村
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                 糞虫館
                     


   真っ白な壁の前のガラスケースに、メタリックブルーや緑、赤色などの物が陳列されている。
   懐中電灯で照らしてみる。その色はいよいよ鮮やかに深く、まるで宝石だ。
   指にとまらせてみたいと思う。

   だがその正体は糞虫だ。

   奈良町の、向かい合った長屋の路地を入った一番奥に「糞虫館」はある。
   聞き慣れない名前だが、ミニ昆虫館だ。
   ただし展示しているのは、動物の糞のみを食料とする糞虫だけという、ユニークさだ。

   日本には約160種類の糞虫が生息していて、そのうちの60種類が奈良県にいるという。
   神鹿の糞を運ぶルリセンチコガネは、特に有名だ。
   その名の通り瑠璃色に輝き、しかも奈良でしか見ることが出来ない。
   糞虫マニアからは、奈良公園は糞虫の聖地と呼ばれているそうだ。
   
   神様がお乗りになる神鹿が排出する糞は、毎日1トン以上だとか。
   それを糞虫たちが綺麗に掃除をしているのだ。
   奈良公園の清潔は、糞虫たちが担っているといっても過言ではない。
   但し、ルリセンチコガネは「ファーブル昆虫記」にあるスカラベのように、糞を玉のようにして
   転がさないのは、私的には、ちょっと残念だ。
   
   カブトムシのような大型のものから、ミリ単位のものまで、世界中の数えきれない糞虫が展示
   されている糞虫館を訪ねると、糞虫の認識が一変すること間違いなしである。
   館内はまるで宝飾店だから……。
   
   
                       ならまち糞虫館   奈良市南城戸町28-13

                       2018.11.20